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造林コスト削減のため、「伐採と造林の一貫作業システム」が推進されるなか、植栽適期が長く植栽効率に優れたコンテナ苗が注目されています。
森林研究所では、湯沢町の積雪深が3m以上になる地点において、コンテナ苗の生育調査を行い、同時に植栽した裸苗と初期成長を比較しました。今回はその結果を紹介します。
湯沢町三俣地内において、春植えと秋植えの試験区を設定し、春植え区は2015年6月に、秋植え区は同年11月にスギのコンテナ苗と裸苗を同時に植栽しました。いずれの植栽地においても、植栽直後から2022年秋まで成長調査を行いました。
2022年秋時点の春植え区において、コンテナ苗の樹高および地際直径は、裸苗と統計的に有意な差はみられませんでした(図1)。形状比(注)は、植栽初期はコンテナ苗が裸苗を上回っていましたが、2018年以降は同程度で推移しました(図1)。
図1 春植え区におけるスギ苗の樹高、地際直径、形状比の推移
図中のアスタリスクは苗種間に有意差があることを,「ns」は苗種間に有意差がないことを示す(Welchのt検定)
2022年秋時点の秋植え区において、コンテナ苗は裸苗と比べて地際径および樹高が有意に小さいという結果が得られました(図2)。形状比は、期間をとおしてコンテナ苗が裸苗を上回りました(図2)。
図2 秋植え区におけるスギ苗の樹高、地際直径、形状比の推移
図中のアスタリスクは苗種間に有意差があることを,「ns」は苗種間に有意差がないことを示す(Welchのt検定)
また、調査地の傾斜が緩かったためか、春植え区・秋植え区ともに根抜け被害は発生しませんでした。
本調査地では、春植え区と秋植え区の苗の育苗期間の長さが異なるため、植栽時期間での生育状況の比較はおこないませんでした。しかし、春植え区ではコンテナ苗と裸苗に大きな差がみられなかったのに対し、秋植え区ではコンテナ苗の樹高および地際直径が裸苗を下回るなど、両区の結果には一貫性がなく、植栽時期が影響した可能性が考えられました。それらの課題についても検討しながら、今後も多雪地におけるコンテナ苗植栽についての知見を集積していきたいと思います。
本研究を進めるにあたり、関東森林管理局中越森林管理署の皆様には調査地の提供および現地調査にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
注:苗木の形状を示す指標。この値が大きいほど細く長い幹であることを示す。
森林・林業技術課 田中 樹己