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造林コスト削減のため、「伐採と造林の一貫作業システム」が推進されるなか、植栽適期が長く植栽効率に優れたコンテナ苗が注目されています。
森林研究所では湯沢町の積雪深が3m以上になる地点において、コンテナ苗の生育調査を行っています。その生育状況については本年6月号に掲載したところですが、このたび、植栽木の雪害状況について詳細な調査を実施しましたので、その結果を報告します。
湯沢町三俣地内において、春植えと秋植えの試験区を設定し、春植え区は2015年6月に、秋植え区は同年11月にスギのコンテナ苗と裸苗を同時に植栽しました。そして、2023年6月(春植え区では9成長期目、秋植え区では8成長期目)に、雪害状況の確認をおこないました。
雪害状況は、調査時点で生存していた植栽木の幹を地際から3分の1を「根元」、その上3分の1を「幹」、最も上の3分の1を「梢端」と区分し、それぞれの部位ごとに被害状況を「曲がり」、「折れ」、「割れ」、「倒れ(梢端を除く)」、「抜け(根元のみ)」の5種に区分して記録しました。被害本数を生存本数で除して被害率を算出し、苗種・植栽時期間で比較をおこないました。
苗種・植栽時期ごとの雪害状況を図1、2に示します。
図1 春植え区におけるスギの雪害状況
図中の数値は部位ごとの被害率(被害本数/生存本数)を示す。
「折れ」と「曲がり」両方の被害がみられた個体は、「折れ」として扱った。
図2 秋植え区におけるスギの雪害状況
図中の数値は部位ごとの被害率(被害本数/生存本数)を示す。
「折れ」と「曲がり」両方の被害がみられた個体は、「折れ」として扱った。
根元の曲がりや折れは、いずれの苗種・植栽時期においても百パーセント近い個体でみられました。また、春植え区において、根元折れ被害が秋植え区より多い傾向がみられ、植栽時期または成長期間の違いが何らかの影響をおよぼした可能性が考えられました。
被害率については、植栽時期、苗種にかかわらず同程度であり、今回の事例では、雪害の被害率において苗種の違いによる影響は少なかったと考えられました。
本調査地においては、今後も生育調査を継続する予定です。引き続き多雪地におけるコンテナ苗植栽についての知見を集積していきたいと思います。
本研究を進めるにあたり、関東森林管理局中越森林管理署の皆様には調査地の提供および現地調査にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
森林・林業技術課 田中 樹己