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当所では、きのこの菌床栽培における廃菌床(廃培地)の利用可能性について研究しています。本稿では、廃菌床を利用した栽培試験でわかってきたことについて紹介します。
廃菌床とは、おが粉等に栄養を添加し、ビンや袋に詰めて栽培する菌床きのこの収穫後に排出される菌床(培地)のことを指します。生産施設から排出される廃菌床の一部は、畑の土壌改良材や家畜の飼料等に再利用されていますが、廃菌床の多くがお金をかけて、産業廃棄物として処分されています。廃菌床には菌床の材料である、針葉樹や広葉樹などのおが粉や栄養材として添加されたふすま(小麦ぬか)や米ぬかなどの栄養分が残っています。このため、廃菌床の新たな有効利用方法が求められています。廃菌床をきのこの菌床栽培へ利用する動きは、1990年代以降を中心にみられるようになり、本県のほかいくつかの自治体で研究されています。
廃菌床をきのこ栽培に利用する利点としては処分コストの削減のほかに、菌床栽培に使用する新規購入のおが粉の使用量を減らし、生産コストを削減することが挙げられます。例えば、2022年度版きのこ年鑑(株式会社プランツワールド 2022)のナメコ菌床栽培の経営指標によると、年間の消耗費のうちの菌床の材料費(培養基質)の六割以上を広葉樹おが粉が占めます。したがって、おが粉を廃菌床で置き換えること(以下、置換)ができれば、きのこの生産コスト削減が期待できると思われます。
当所ではエノキタケとナメコの菌床栽培において、主にエノキタケ、シイタケ、ナメコの廃菌床が利用できるかを研究しています。これまでの栽培試験の結果、栽培するきのこの種類や置換する廃菌床の種類によりますが、(1)ある程度の置換割合であれば、新規購入のおが粉を廃菌床で置換しても、新規の菌床と比較して遜色ないきのこを得られました(写真1から3)。(2)新規の菌床よりもきのこの収量が増加する場合があることがわかってきました。
写真1 エノキタケ廃菌床(コーンコブ配合培地)で置換したエノキタケ
※写真1から3の上部の数値は、おが粉に対する置換率(数値が大きいほど、廃菌床の量が多い。)
写真2 シイタケ廃菌床で置換したナメコ
写真3 ナメコ廃菌床で置換したエノキタケ
試験研究へ廃菌床を提供いただいた、きのこ生産者の皆様にはこの場を借りて感謝申し上げます。
今後も皆様に研究成果をお知らせできるように、引き続き栽培試験を行っていきます。
きのこ・特産課 清水達哉