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日本の人工林の多くが植栽当時に想定した伐期に到達し、林木は十分に木材利用が可能な大きさに育っています。しかし、主に収益性の問題から、思うように主伐や、それに続く再造林が進まない状況が続きました。
本県においても、人工林は高齢級化が進んでいるため、積極的に主伐・再造林を行い、循環型林業を推進することが必要です。そこで、本県における主伐・再造林及び初期保育の現状を把握し、施業コストを低減することを目標に研究を行っています。
本稿では、現在行っている代表的な研究内容について、いくつかご紹介します。
1 主伐・再造林一貫作業システムの検証
主伐時に使用した林業機械を活用し、地拵えや植栽を行うことを主伐・再造林一貫作業システムといいます。
その中でも、コスト削減の余地がある作業の一つと考えられる、機械地拵え(写真1)に着目しました。機械地拵えは、主伐時に使用したグラップル等を活用した地拵えで、従来の人力地拵えと比べ、労力の削減になるといわれています。
機械地拵えの詳細なコストを分析するため、動画撮影による工程調査を行っています。
写真1 機械地拵え
2 次世代苗木の下刈り省力効果の検証
本県の主要樹種であるスギについては、今後、次世代苗木(成長の早い無花粉スギ等)への移行が見込まれています。
成長の早い苗木を用いることで、従来の苗木と比較して短い年数で、植栽木が下刈り不要な樹高まで成長することが期待されます。
そこで、従来苗木と次世代苗木の成長にどのような差があるのか、また、下刈りの手法(全刈り、坪刈り(写真2)等)によって植栽木の成長にどのような影響があるのか、植栽木の成長量調査(写真3)を行うとともに、省力化の効果を検証しています。
写真2 下刈り省力化(坪刈り)を実施した植栽木
写真3 植栽木の成長量調査
少子高齢化、人口減少が進み、林業においても労働力の確保が課題となっている以上、限られた人員でいかに効率良く施業を行うかが重要になってきます。そのため、主伐・再造林一貫作業システムや次世代苗木等の様々な新技術が登場し、徐々に浸透してきています。
また、労力や費用といったコスト面での効率的な施業が求められる一方で、それが植栽木の生育や、後の施業へ及ぼす影響についても考慮した上で、研究を行っていきます。
最後に、林業事業体、森林所有者の皆様におかれましては、引き続き主伐・再造林地の調査への御協力をよろしくお願いします。
きのこ・特産課 井嶋陸