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既に無花粉スギ100個体については林業にいがた既報で紹介済みですが(688号、773号)、これを第Ⅰ期開発品種とすると、今回は第Ⅱ期開発品種にあたる「S3T」家系40個体について紹介します(表)。
内容 開発期 |
家系名 1) | 個体数 | 作出期間 |
---|---|---|---|
第Ⅰ期 | S1S1 , TT | 100 | H11~20年 |
第Ⅱ期 | S3T | 40 | H18~23年 |
計 | 140 |
S1:新大不稔1号 T:富山不稔1号 S3:新大不稔3号
1) 記号の前側が母樹、後側が花粉親であることを示す
無花粉スギは雌花については正常に機能します。無花粉スギ原種「S3」と「T」それぞれの無花粉スギ(原種)に精英樹を交配して1世代目を作出し、さらに1世代目同士を掛け合わせて2世代目を作出すると、メンデルの法則によって2世代目は4分の1が無花粉スギになります。この交配を20組合せ実施し、それぞれの組合せから2個体を選び全40個体の無花粉スギを選抜しました。これらが「S3T」家系となります。
これら40個体は7年かけて採穂台木(写真)仕立てにし、8年目にそれぞれの採穂台木からさし穂を取り令和2年4月にさし付けました。翌3月に発根率と発根量(指数)を調査し、その後3年苗まで育苗して、令和4年10月に苗木の成長を調べました。なお、対照として、さし木推奨品種である中頸城4号を使用しました。
写真 採穂台木
(1) 発根について
発根率は、2個体を除きほぼ100%でした。発根が悪かった2個体(発根率71%、25%)は同じ交配に由来することから、発根性には遺伝が関係するようでした。また発根量(指数)は第Ⅰ期開発品種と比べやや少ない傾向が見られました。
(2) 苗木成長について
3年苗の成長(苗高・地際径・乾燥重量)について対照と比べたところ、地際径と乾燥重量では成長が良好で苗高では成長が劣った個体は3個体だけでした。(図1)つまり苗高では37個体は対照である中頸城4号と同等程度以上でした。
図1 S3T家系と対照の3年苗での苗高箱ひげ図
また第Ⅰ期開発品種の2家系と比較してもS3T家系は成長良好でした。(図2)
図2 家系別苗高
前述のように無花粉スギを作出するためには原種から数えて2世代目まで世代を進める必要があります。この過程で、成長良好個体が選ばれていきます。そのため、成長の良いもの同士が交配され、2世代目では結果的に成長が良くなっているものと考えられます。
S3T家系については第Ⅰ期開発品種2家系と同様に、成長を確認するため林地へ植栽しています。今後成長調査を進めていく予定です。
森林・林業技術課 岩井淳治