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【魚沼】メンタルヘルスシリーズ第9回 「働く人のメンタルヘルスを知ろう」
労働安全衛生法が改正され、平成27年12月から、50人以上の職場での職員のストレスチェックが義務づけられるなど、職場のメンタルヘルス対策に年々注目が集まっています。
20代~50代の、いわゆる「働き盛り世代」と呼ばれる方々は、就職、結婚、昇進、子育てなど、職場においても、家庭においても、責任が大きくなる世代と考えられ、日常のストレス対処が健康を保つためには大切です。
また、全国でも、新潟県でも、そして魚沼市でも、50代男性の自殺者数がどの年代よりも多い状況ですが、近年は20代~40代の若年層の自殺者も増加傾向にあり、働き盛り世代へのメンタルヘルスケア対策が重要となっています。
今回は、「働き盛り世代」に注目し、働く人のメンタルヘルスの特徴や対応策などを紹介していきます。
(1)働く人のメンタルヘルスの状況
「労働者健康状況調査」(平成24年、厚生労働省)によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある、と答えた労働者は約6割いました。
また、「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」(平成22年、独立行政法人労働政策研究・研修機構)によると、回答した企業の約6割で、メンタルヘルスに問題を抱える正社員がいると答えており、そのうち約3割の職場で3年前に比べてその人数が増えた、と回答しています。
さらに、同調査によると、メンタルヘルス不調による1か月以上の休職者では、若年層が多い「役職なし」という方が6割以上と多くおり、20代~30代の若い年代からも「働き盛り世代」へのメンタルヘルスケアが求められていると考えられます。
では、「働き盛り世代」のメンタルヘルス不調を引き起こす要因はどこにあるのかをみてみましょう。
(2)働く人はストレスフル?
「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」では、メンタルヘルス不調者が現れる原因について、企業側の認識を確認したところ、「本人の性格の問題」という回答が7割と多くありましたが、次いで、「仕事量(負荷)の増加」、「仕事の責任の増大」、「コミュニケーションの不足」という回答になりました。
近年、わが国では、非正規雇用の増加、雇用抑制といった雇用事情があり、30代正社員に対する過重な労働負担という点が懸念されています。
これまで、現場の実質的なリーダーとなっていた方は、経験年数も積んでいる40代以降の社員でしたが、昨今の雇用事情により、人生経験がまだ浅く、私生活の基盤も安定していない30代に任されることが多くなるなど、若い世代が、対処しきれないストレス要因にさらされる機会が多くなったと考えられます。
また一方で、パートやアルバイトなどの非正規雇用の方は、自分の雇用の不安定さからくるストレスを感じている人が多く、雇用形態による違いはあれど、働く人はストレスを感じやすいと考えられます。
(3)働く人のストレスとは?
では、具体的に働く人のストレスとなり得るものにはどのようなものがあるのでしょうか。
上の表が仕事関係で、下の表が仕事以外で、ストレスを感じるものの例です。
ストレッサーとなり得る要因 | 具体例 |
---|---|
職場環境 | 事業所内の暑さ・寒さ、(机周りなどの)スペース、通勤(時間、手段)など |
仕事量・内容 | 担当業務、ノルマの達成、残業、業務の変更など |
人間関係 | 上司、同僚、部下、仕事相手(取引先)、パワハラ、セクハラなど |
ストレッサーとなり得る要因 | 具体例 |
---|---|
生活環境 | 家(立地、間取り)、買い物(場所、品揃え)、暑さ、寒さなど |
家庭 | 結婚、夫婦関係、子育て、両親の介護など |
人間関係 | 友人、近所付き合いなど |
働き盛り世代の方々は、多くのストレッサーに出会う場合があります。
このため、自分のストレスサインに気づく視点(セルフチェック)や対処方法(セルフケア)をより早期に取り入れ、メンタルヘルス不調へのケアを行うことが心身の健康を保つためには必要となります。
(4)頑張りすぎると燃え尽きる
「ストレスが溜まっているのは分かるけれど、いつものことだから頑張らなくては!」と自分のストレスサインを受け流していると、自分でも気づかないうちに心身の健康を損なうことがあります。
ここでは職場のストレス反応の一つとして現れる「バーンアウトシンドローム(燃え尽き症候群)」と呼ばれる症状を紹介します。
バーンアウトとは、今までエネルギーに満ちあふれ、仕事に没頭していた姿とは全く対照的な状態になる、急にあたかも「燃え尽きたように」意欲を失ってしまう状態のことを言います。教職や医療職、福祉職などの対人援助職で多く見られると言われています。
バーンアウトすると、まず心身の極度の疲労(疲労感)、感情の枯渇(無気力感)、自己・仕事嫌悪(不満足感)といった状態が見られます。その状態が悪化すると、仕事を機械的にこなすようになり、アルコールや薬物などへの依存、不眠、頭痛といった身体症状も見られるようになります。
バーンアウトしないようにするためには、まずは、「いつもの自分と違う感じ」という身体やこころからのストレスサインに気づくことが大切です。
バーンアウトは徐々に進行していくプロセスであり、早期に対応せず、進行してしまうと、職業生活だけでなく、日常的な人間関係の崩壊など、私生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
決して軽視せず、ストレスサインに早めに気づき、生活のリズムや内容を見直す、自分に厳しくしすぎないなど、こまめにストレスに対処できるようになりましょう。
(5)働く人のメンタルヘルスをケアするために
働き盛り世代のメンタルヘルスケアのためには、個人、職場、家族それぞれができることがあります。今回は、個人で取り組めることを紹介します。
(1)過度のストレスのサイン「3A」に気づく
ストレスが溜まると3Aと呼ばれるサインが現れます。「いつもと違う自分」に気づき、早めに休養するようにしましょう。
- アルコール:お酒の飲み方、酒量が変わる。
- アブセンティーズム:無断欠勤、遅刻など、勤怠トラブルが目立つようになる。
- アクシデント:やりなれた業務での事故、ミスが目立つようになる。
(2)ストレス耐性を高める「アサーション」を使う
アサーションとは、より良い人間関係を構築するためのコミュニケーション技法の一つで、相手も自分も立てながら、自己主張をうまく伝える自己表現のことを言い、「さわやかな自己主張」と言い表されることがあります。
例えば、あなたが急ぎの仕事を抱えている状況で、上司から「今からこの書類を作成してもらえるか?」と言われたら、どのように答えますか。
「今は忙しいです」「後からやります」といった答えでは、自分も相手も良い気持ちになりません。
「今は、○○時までにやらなければならない仕事がありますが、△△時からなら取りかかることができます。どうでしょうか。」といった伝え方がアサーションを取り入れた会話術です。
自分の主張ばかりを通しては、職場の人間関係が上手く行きづらくなりますし、反対に、相手の要求ばかりを受けていては自分が疲弊していきます。
自分の状況を伝えながら、相手に譲歩案を出す、といった伝え方にすることで、自分も相手も気持ちを楽にして関係を維持することができると考えられます。
職場のメンタルヘルス対策~4つのケア
参考として、職場で取り組むメンタルヘルス対策における「4つのケア」と呼ばれるケアの流れを左表のとおり紹介します。
当部では、働く人のメンタルヘルス対策の一つであるストレスサインのセルフケアについて、リフレッシュ出前講座を通して情報提供しています。この講座に関しては下の当部HP関連リンクからご覧になれますので、職員のメンタルヘルスケアにぜひご利用ください。
【当部HP】関連リンク
関連リンク
- こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト<外部リンク>
- 独立行政法人労働者健康安全機構 新潟産業保健総合支援センター<外部リンク>