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平成20年6月定例会(提案理由)
平成20年6月定例会提出議案知事説明要旨
議案についての知事の説明を掲載しています。
6月25日説明要旨
平成20年6月定例県議会の開会に当たり、前議会以降の県政の主な動きと、提案致しております議案の概要をご説明申し上げ、議員各位並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
はじめに、本県の現状と課題についてであります。
本県は、4月1日の推計人口で240万人を割り込むこととなりました。これは、出生数の減少による自然減とともに、18歳から24歳までの若い層が進学や就職で県外へ流出する社会減が大きく影響しているためです。
人口の急激な減少は、企業・商店街の売り上げ低下を招き、保育所や学校、病院さらには交通機能も縮小していかざるを得ず、地域社会全体に大きな痛みをもたらします。
人口の社会動態は、地域の魅力を反映する究極の「住民投票」であり、多くの人に選ばれる地域をどのように作っていくかは、自治体に課された本来の使命だと思っています。
今、本県には、
- 深刻な勤務医不足への対応をはじめ福祉・医療環 境の整備
- 個性や能力を活かす教育環境の整備
- 産業の高付加価値化と魅力ある雇用の場の確保さらには、
- 社会インフラや地勢学的な優位性を活かした対岸 諸国との交流・交易の活性化
などの様々な課題があります。
こうした課題を克服し、魅力ある地域社会、「将来に希望の持てる魅力ある新潟県」を実現していくことが、ひいては人口減少社会からの脱却につながっていくものと考えています。
しかしながら、これらの取組は、県だけで全ては出来ません。県民の皆様とともに、県全体の総合力を発揮するなかで進めていく必要があります。県としてコーディネートの役割を果たしながら、多くの方々から地域づくりに参画していただけるよう、県政運営に取り組んでまいりたいと考えております。
議員各位並びに県民の皆様からのご理解、ご協力をお願い申し上げます。
次に、災害からの復旧・復興についてであります。
中越沖地震の発生から間もなく1年を迎えようとしております。この地震は、特に高齢者に多くの犠牲者を出し、15名の方々の尊い命を奪いました。改めて、亡くなられた方々に哀悼の意を表したいと思います。また、住宅や宅地、職住一体の商店街など、住民一人ひとりの財産を直撃し、生活を一変させる甚大な被害をもたらしました。被災地では、被災された方々の生活・住宅の再建や商店街の復興に向けた様々な取組が進みつつありますが、今現在、900世帯を超える方々が仮設住宅で居住されています。県としましては、まずは、来年9月で入居期限を迎えるこれらの方々をはじめ、被災された方々に対し、個々の事情を踏まえたきめ細やかな支援により、早急に生活・住宅の再建の目途を立てていただけるよう最優先で取り組んでまいります。
また、中越大震災の被災地では、復興過程に入って、様々な取組をスタートさせ、持続可能な地域社会形成を目指した基礎づくりに挑戦されているところです。この中越での復興を確実に成し遂げることが、後に続く中越沖地震の被災者の皆さんの希望となり、また、国の内外より支援をいただいた全ての方々への恩返しになるものと思っています。県としても引き続き復興の取組を強力に支援してまいりたいと考えています。
我が県において、復興の取組を進める中、去る5月12日に四川大地震が発生し、また、6月14日には岩手・宮城内陸地震が発生したところです。
亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、負傷された方々、被災された方々に対しお見舞い申し上げます。
なお、四川大地震には、中越大震災と類似する点が数多くありましたので、職員を現地に派遣し、中越大震災における本県の災害対応の経験をお伝えいたしました。また、先般開催された日中経済協力会議で来県された崔天凱大使に対しましても、本県が協力できることを直接お話ししたところです。今後とも、被災地が一刻も早く復旧、復興するため、被災地の要請を踏まえて支援してまいりたいと考えております。
この項目の最後に、原子力発電所についてです。原子力発電所の安全性をめぐっては、現在、中越沖地震による設備の健全性や耐震安全性、地質の問題などについて、国の審議会や県の2つの小委員会において、活発な議論が行われております。
先般、東京電力が「敷地周辺の地質」や「基準地震動」に関する報告書を国に提出し、公表したところです。
県としましては、これらを含め、県民の皆様に論点を整理して分かりやすく伝えるとともに、不安を抱いている課題について、県民の目線で確認するため、まずは、しっかり議論を行っていくことが重要と考えております。必要により東京電力や国に対して適切な対応を求めてまいります。
次に、県民の暮らしと健康を支える医療・福祉についてです。
現在、国において、「後期高齢者医療制度」について見直しの議論が進められています。この制度については、75歳で線引きをすることとなっていることに加え、その周知方法が不十分であったことや制度が複雑であることなどから、高齢者の方々に疎外感を与えるとともに各方面から批判が出ているところです。改善や運用の見直しという対応のみでなく、税方式への転換も含めた「受益と負担のあり方」について国民的な議論と国民の合意形成により、高齢者の方々が安心して医療を受けられるような制度にすべきと考えており、国へ要望を行ったところです。
また、薬害肝炎問題については、県議会からの議決もいただき、カルテなどのない患者にも、母子手帳などカルテ以外の記録などで幅広く認定ができるよう、私自ら厚生労働省に申し入れを行ったところです。今後とも、裁判所の認定状況を見極めながら、県として適宜、必要なフォローを続けてまいりたいと考えています。
新潟水俣病問題については、本年3月に「新潟水俣病問題に係る懇談会」から、最終提言が出されたところです。「公害」による被害という誰にでも起こりうる事象に対し、誰もが安心して暮らせる社会をつくっていくためには、こうした被害者を社会全体でサポート、救済する仕組みが必要だと考えております。
県としましては、今回の提言を県政に反映させるべく、新たに検討会を設置し、被害に遭われた方々の救済・支援に向けた施策と制度設計、又その根拠となる条例の制定について助言をいただきながら、検討を進めてまいりたいと考えています。
次に、医師確保についてです。
本県の医師数を、全国平均と同レベルまで引き上げるには、約770人の医師が必要になっています。しかし、県内の医師養成定員は暫定増を含めて新潟大学の定員110名のみであり、特に問題となっている勤務医不足の解消、とりわけ産婦人科、小児科、麻酔科など特定診療科の医師の確保は大変厳しい状況にあります。
県では、新潟大学はじめ、県内の臨床研修病院や県医師会などと連携しながら医師確保や勤務医に魅力ある職場環境の構築について検討を進めています。先月のゴールデンウィークには、魚沼市で県医師会のドクターショートサポートバンクを利用して、首都圏の勤務医と連携した休日救急診療が行われており、勤務医の負担軽減に取り組んでいるところです。
そうした中、先頃、厚生労働省から「安心と希望の医療確保ビジョン」が公表されました。従来の医師数削減から増加への方針転換を明記したことをはじめ、臨床研修制度の見直しや医師の勤務環境の改善、さらには地域医療の充実など、本県が国に要望してきたものもビジョンとして打ち出されています。医師確保は、地方の努力のみでは対応困難です。今回のビジョンを受け、地方で医師を確保できる体制、制度が構築され、安全で安心な地域医療の提供につながるものとなるのか、今後の国の議論を見極めながら、必要に応じて国に要請してまいります。
次に、個を伸ばす人づくりの推進についてです。
本県では、進学や就職を理由とする若者の転出超過が拡大傾向にあります。人口減に歯止めをかけ、地域社会を持続可能なものに再構築するためには、まず、若者が魅力を感じるような教育環境の整備・充実が必要と考えています。
昨年度設置した「個を伸ばす教育のあり方検討会」からの提言を受け、今年度は、その具体化として、
小学校の低学年から段階を追って自分の人生設計を理解できるようにする「新潟方式のキャリア教育」や選ばれる教育環境づくりについて、検討を進めるため新たに有識者の委員会を設置したところです。今後、県民の皆様の意見をお聴きしながら、「新潟に来ると自分の夢が叶う」と言われるような、若者が集う魅力的な教育環境の実現に向け取り組んでまいりたいと考えています。
次に、県内経済・産業の現状と対応についてです。
本県経済は、全国平均に先行して悪化していく懸念があるものと思われます。これは、本県企業の多くが、技術力があっても、経営規模が小さく、首都圏の大企業との下請け関係にあるため、経営面で他律的な立場にあり、十分な利益、付加価値が得にくい産業構造が一因になっていると認識しています。
今、世界では、食料、原油等エネルギー、素材の価格が高騰しています。希少財としての価値は、これまでのハイテク製品から、こういったものへ転換してきていると思っています。本県には、石油・天然ガス等豊富なエネルギー資源や、ロシア・中国等エネルギー産出国とのゲートウエイ機能、さらには国内有数の食料生産能力と食品産業の集積という特色、優位性をもっています。これらをどう活かして世界の中で地位を占めて行くかをにらみながら、本県産業の高付加価値化、振興に取り組んでまいりたいと考えています。
特に、本県の社会・経済を支える重要な分野である農業については、新潟米はここ数年価格が低下し、売り上げも減少している状況にあります。どのように米をはじめ生産物の付加価値を高め、産業として魅力ある本県農業を作っていくかを念頭に政策を進めてまいりたいと考えています。
現在、検討会を設置し、新潟米の消費者への情報提供のあり方、ブランド強化に結びつく表示のあり方について市場での実証実験を含め検討をいただくこととしています。消費者の目線に立ち、企画・販売を念頭に入れた生産・流通の取組により、消費者の支持・信頼を勝ち得る農業を推進していくことで、本県農産物のブランド化、高付加価値化を進めてまいりたいと考えております。
次に、本県の交流・交易の拡大についてです。
先月のG8労働大臣会合から今月の日中経済協力会議まで一連の国際会議が本県で開催されました。これによって、新潟の名前を世界に広く紹介することが出来ただけでなく、新潟は世界の閣僚級の国際会議を開催する能力を有するということを証明できたものと思います。今後、こうした成果を国内外に発信するとともに、得られた経験・ノウハウを有効活用し、北東アジアとのゲートウエイ、表玄関化に向けた取組を進めていきたいと考えております。
そうした中、港湾、空港などの交通結節点の機能強化、活性化は重要な課題です。特に、日本海横断国際フェリー航路については、日中経済協力会議に際し、吉林省副省長と早期開設実現に向けた連携について直接会談を行なったほか、先月開催されたフェリー代表者と4か国地方政府代表者の合同会議への職員派遣など、関係機関への働きかけや調整に努めているところです。また、全日空新潟-福岡線については、5月までの搭乗率は目標を達成していますが、福岡県や県内の経済界、関係団体とも協力して引き続き利用促進に取り組んでまいります。
さらに、2014年度末にJRから経営分離予定の並行在来線は、住民の生活交通であるとともに、交流人口の拡大、経済活動の振興など、地域社会全体の活性化に資する重要な社会インフラです。今後、開業に向けて経営を中心とした検討を深めるため、体制強化を図ることとし、新潟県並行在来線開業準備協議会を設立することとしました。沿線全市の協力を得ながら、地域の鉄道を守るため、積極的に取り組んでまいります。
次に、危機管理についてです。
県民のくらしを脅かす様々な危機に的確に対応し、社会の安全・安心を維持向上するには、日頃から危機管理の重要性を認識し、備えていくことが大切です。
県では、新たな危機として対応が求められる、新型インフルエンザ発生対応訓練を3月に実施し、今月には平成17年12月の新潟大停電の経験を踏まえて停電時における県庁舎の初動対応訓練を行ったところです。
特に、新型インフルエンザ対策については、住民の行動制限や交通制限に係る法的根拠の整備をはじめ様々な課題があり、この解決、ルールづくりのためには社会全体で議論していく必要があると考えています。全国知事会と厚生労働省との意見交換の場においてこのことを要請したところです。
新型インフルエンザの爆発的感染の発生に対しては、現在、必ずしも万全とは言えない状態にあります。この冬の前に、具体的な対応策、広報活動等の問題点を洗い出し、さらに広範囲の訓練を行い、非常事態への準備を進めてまいる所存です。
次に、拉致問題についてです。
今回の日朝協議において、北朝鮮が拉致問題の解決に向けた具体的行動を今後取るための再調査の実施を約束したとの、政府発表がありました。
特定失踪者も含めた拉致問題の全面解決につながる一つのプロセスが示されたものと受け止めたいと思っております。実効性が担保されたしっかりとした枠組みのもとで再調査がなされること、また、制裁措置の一部緩和についても、再調査の具体の進展を踏まえて行われる必要があると考え、先般、総理大臣あて要望したところです。今後の推移を見極めながら、拉致問題が一日も早く全面解決されるよう、引き続き対応してまいりたいと考えております。
次に、地球環境問題への取組についてです。
G8労働大臣会合においても、環境に優しい働き方を謳った新潟宣言が行われました。京都議定書の第一約束期間が今年から始まっていますが、県内の温室効果ガスの排出量は、家庭、運輸部門が増加する中、全体的に増加し続けています。
県では、県民の日々の生活のなかで二酸化炭素の削減が進むよう取り組んでまいります。先般、商品の販売時にオフセット料金を上乗せし、料金のなかから森林整備など吸収源対策や排出量削減対策を行う、カーボンオフセット事業を佐渡市、民間企業等と協力して立ち上げたところです。二酸化炭素の排出量、吸収量等については当面、県が認証機関の役割を果たしながら、ノウハウを蓄積するとともに、このカーボンオフセットのスキームを全県、さらには全国にまで広げ、低炭素社会に向けた有力なツールとすべく取り組んでまいりたいと考えています。
最後に、地方分権の動きについてです。
先般、地方分権改革推進委員会の第1次勧告が取りまとめられました。各府省の抵抗のなか、「地方政府」の確立に向け、国と地方の役割分担の考え方を示し、各行政分野の抜本的な見直しを勧告するなど一定の評価ができると思っています。
一方、国の出先機関の見直しや税財政制度の改革など第2次勧告以降に積み残された課題も多くあります。また、これまで地方が主張してきた地方共有税の導入や国と地方の協議の場についても先送りされています。さらに、今般の道路特定財源の暫定税率の期限切れに際しては、国政での混乱が地方の行財政運営に大きな影響を及ぼしました。このような事態を避ける上でも、地方税の税率等を地方が自主的に決定できるなど真の課税自主権の実現に向け地方税制度の改正が必要と考えます。
県としましては、今後とも全国知事会をはじめ地方六団体と足並みを揃えつつ、真の地方自治の実現に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えています。
続いて、提案しております主な議案についてご説明申し上げます。
第96号議案は、一般会計補正予算でありまして、総額21億5,068万1千円の増額補正についてお諮りいたしました。
今回の補正は、去る2月24日に発生した冬期風浪被害からの早期復旧を図るため所要の経費を増額計上するとともに、東京電力からの寄付金を財源に行っている中越沖地震の被災者への生活・住宅再建及び観光・産業復興への支援について、前年度の執行残相当額を増額計上しております。
また、地方公営企業等金融機構に出資することとしたほか、当初予算編成後の事由による緊急性のある経費等について計上するものであります。
以上、補正の主な内容について説明申し上げましたが、その結果、補正後の財政規模は、1兆1,880億4,712万円となります。
次に、その他の主な条例案件等についてご説明申し上げます。
第100号議案は、温泉法の改正に伴い、可燃性天然ガスの濃度の確認申請などに係る手数料を規定するため、
第101号議案は、地方法人特別税が創設されることに伴い、法人事業税率を引き下げるなど所要の改正を行うため、
第103号議案は、災害対応における保健・看護の重要性に鑑み、社団法人新潟県看護協会から県防災会議委員を任命するにあたり、委員定数を見直すため、
第104号議案は、県内の中小企業者等の円滑な事業再生を目的として、信用保証協会の求償権の放棄等を知事の承認により行うことができるようにするため、
第107号議案は、直江津港における港湾荷役機械の管理方式の見直しに伴い、使用料を改正するため、
第108号議案は、道路交通法施行令の改正による運転免許証のICカード化に伴い、免許証交付手数料等を改正するため、
それぞれ、条例の制定及び所要の改正を行うものであります。
次に、第109号議案は財産の処分について、
第110号から第112号までの各議案は、契約の締結・変更について、お諮りするものです。
次に、第113号から第117号までの各議案は、急施を要するため、やむを得ず専決処分を行ったものについて、承認を求めるものであります。
すなわち、第113号議案及び第116号議案は、2・24冬期風浪被害からの早期復旧を図るため所要の措置を行ったものであり、
第114号議案及び第115号議案はそれぞれ、平成19年度一般会計補正予算、平成19年度災害救助事業特別会計補正予算であり、歳入予算及び歳出予算ともに最終見込額又は確定額を計上したものであります。
また、第117号議案は、道路交通法違反による現行犯逮捕及び留置に係る新潟県を被告とする損害賠償請求事件について、県が一審敗訴したため敗訴部分の取り消しを求めて控訴するものであります。
次に、第118号議案は、新井郷川排水機場における不正経理に関与した元県職員に対し、損害賠償を求める訴えを提起するため、
最後に、第119号議案及び第120号議案は、損害賠償額の決定についてお諮りするものです。
以上、主な議案の概要につきまして説明申し上げましたが、何とぞ慎重ご審議のうえ、各議案それぞれについて、ご賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
7月11日説明要旨
ただいま上程されました議案2件は、いずれも人事に関する案件であります。
第123号議案は、監査委員を選任するため、
第124号議案は、公安委員会委員を任命するため、
それぞれお諮りいたしました。
よろしくご審議のうえ同意を賜りますようお願い申し上げます。