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平成25年9月定例会(請願第5号)
第5号 平成25年9月19日受理 厚生環境委員会 付託
総合的な子ども医療体制の整備に関する請願
請願者 公益財団法人がんの子どもを守る会 新潟支部代表幹事 望月早智子
紹介議員 沢野 修君
(要旨)
私たちはかけがえのない子ども達を小児がんという病に侵された経験から、がんを含む全ての小児難病を救済するため、子ども医療の拠点となる病院が必要であると強く感じている。
昨年度、厚生労働省の小児がん対策として全国15か所の小児がん拠点病院が指定された。しかし、本県では新潟大学医歯学総合病院が日本海側唯一の拠点病院の候補として、特段に地域的な配慮がなされたにも関わらず、指定を受けることができなかった。今後、状況を踏まえて今回指定に至らなかった医療機関を追加認定することも提言されているが、そのためには、医療レベルの面で子ども病院(小児病棟)としての要件が備わった病院があるだけでなく、県内の医療体制全体として、家族の付き添いや子どもの保育・教育面への配慮という観点からも、全国レベルと比較し遜色ないものと評価される必要があると考える。
小児がんに限らず、長期に治療を要する子どもは、精神的にあまりにも幼く不安定であり、一人で入院生活をおくることは困難な状況におかれる。精神的な安定は治療効果を促進すると言われており、家族が病院内で一緒に生活することは必要不可欠な条件である。しかし、新潟県の医療機関には家族の付き添いを考慮した病棟が無いため、家族は苛酷な環境下で子どもに付き添うことを余儀なくされ、コンクリートの床に寝袋などを敷いて寝ている現状である。レントゲン等の検査器械も大人専用に作られているため乳幼児の検査には適しておらず、大半の小児病棟は成人患者との混合病棟であるなど、入院環境は決してよいものではない。こうした新潟県の小児医療環境の遅れを取り戻すために、家族の付き添いにも配慮した、小児がん拠点病院の要件を満たす病院が早急に整備される必要がある。
また、不妊治療の普及や出産年齢の高齢化、検査技術の進歩などを背景に、胎児段階で小児がんや種々の先天性疾患が発見された新生児は、出生後も長期にわたり、高度な専門医療を提供できる施設への入院が必要となっている。長期間入院する新生児を家族が安心して見守れるよう、小児科、産科、新生児に対応する集中治療室を備えた総合周産期母子医療センターにおいて、新生児と家族の愛着形成を支援するための環境が整備されることが必要である。
一方で、患者に付き添いする家族は、在宅家族との交流もままならず、洗濯などの生活時間も充分に確保することができない。患者である子どもの発育と付き添いする家族の生活を支援するために、保育環境を整備し、治療後の就園や就学が支援されることが望まれる。重ねて、子どもの教育を受ける権利を確保するため、小学校から高等学校までを守備範囲とする教育環境を確保し、治癒後の復学や社会復帰を支援する特別支援学校が整備されることが望まれる。特に院内学級の無い高等学校の教育支援には特段の配慮が必要である。
さらに、小児患者を支える家族には在宅の小児も多く、家族としての絆を保つことが親として大きな負担となっており、その絆が薄れることは末期を迎えた患者の療養生活の質を低下させることにもなり、家族との絆を失ったまま他界する不幸な事例も発生している。緩和ケアや家族のメンタルヘルスをサポートする環境を整備し、きめ細かな対応ができる体制が確立される必要がある。
併せて、新潟県がん対策推進計画の見直しに当たっては、新潟県の小児がん診療を充実させるため、患者の保育や教育、家族のメンタルヘルス、緩和ケアなど多岐にわたる支援策や、小児専門医と診療科専門医が連携した治療を展開する医療環境の整備と患者の長期フォローアップ体制の確保について計画に明記される必要がある。
将来を担う元気な子供たちの輝きを守り、未来のある地域社会を築くには、安心して妊娠、出産、子育てができる生活環境の整備が必要不可欠である。
ついては、貴議会において、出産から小児医療に一貫して対応し、保育や教育、そしてメンタルヘルスサポートなど多岐にわたって患者と家族を支援できる、総合的な子ども医療体制の整備に向けて、特段の配慮がなされるよう配慮されたい。