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令和4(2022)年9月12日(月)に、気になる企業とのコラボセミナーVol.2「白馬村観光局に学ぶ 地域の魅力の売り込み方」を、行政担当者を対象に開催しました。
観光振興や地域振興の行政担当者は、地域の魅力をどうやってアピールしたらよいか、日々考えていることと思います。
長野県白馬村は、冬のスキーやスノーボードだけでなく、オールシーズン自然を楽しめるエリアを目指し、積極果敢に地域の魅力を売り込んでいます。そして近年、スノーピークのグランピング施設や、北アルプスの絶景を一望できる山頂テラスなど、企業とのコラボにより魅力がさらにパワーアップしています。
新潟県も同様の自然環境にあることから、白馬村の取組から学ぶことがあるものと考え、今回のセミナーを企画しました。
白馬村観光局 事務局長の福島洋次郎です。生まれも育ちも白馬村。二十代の頃にバンクーバー(カナダ)に留学していました。
やり方は千差万別。地方創生にテンプレートはありません。それぞれのやり方がありますが、白馬がやってきたことから何かヒントになることを見つけていただければと思います。
(白馬村について)
コロナ前で1シーズン約150万人の来訪者。うち約38万人が外国人。外国人の半分がオーストラリア、3割が東南アジア、2割が欧米。白人系の人が多い。ヨーロッパはフィンランドやスウェーデンのお客様が多い。
一晩で50-60cmの雪が降るような日本特有の場所。ヨーロッパのアルプス並みの急峻な山岳地形。日本とヨーロッパの良いとこ取りをしたハイブリッドなところです。
100年以上スキー文化が根付いている。80歳過ぎのおじいちゃんから小さな子供までスキーのことを語ります。明治期にお客さんを自宅に泊めたことから民宿発祥の地とも言われています。
今、白馬で暮らしたいと移住する人が国内外からたくさん来ています。自然の中で暮らすアウトドアなライフスタイルが実現できる場所として、非常に人気が高くなっています。
(スキーバブル崩壊と長野オリンピック)
長野オリンピックが開催されました。オリンピックの少し前ぐらいからバブルがはじけてスキー人口がどんどん減ってきて、2016年で580万人、今はさらに100万人減の480万人ぐらい。
バブルがはじけてもオリンピックがあるから大丈夫という何の裏付けもない自信だけがありました。宿やスキー場はオリンピック前に過剰投資をしてしまい、今でも緒を引いています。
(オーストラリアへのプロモーション)
そんな中で、何かしなきゃいけないということで、2005年の小泉政権の時に「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という訪日外国人誘致の補助金があり、白馬が最初にそれを活用し、オーストラリアをターゲットとして動きました。
当時、ニセコにオーストラリア人がたくさん来ていましたが、まだまだ日本にスキーに来たいオーストラリア人はいるだろうと考えました。国の補助金を取るために、白馬村の宿12軒ぐらいでお金を出し合って、自己負担分を工面しました。白馬村観光局はお金を出さなくてもいいから、俺たちが出すからと説得し、白馬村観光局の承認をもらい、オーストラリアへのプロモーションが始まりました。
(テクノロジーの進化が追い風)
そういった動きに追風がどんどん吹いてきました。テクノロジーがどんどん進化して、インターネットやスマートフォンが出てきて、SNSで自分たちが何をしているかということを外へ向けて情報発信できるようになった。さらに情報のクオリティを高めるGoProや Instagramが出てきた。スキーやスノーボードなどで、アクティブに世界中を飛び回る人たちは自分たちの存在を知ってもらいたくて発信したがります。GoProで、どんどん、どんどん白馬の映像をSNSで発信していくことで、世界がどんどんどんどん小さくなっていく。
(海外から見た白馬の価値)
今、オーストラリアで一週間オーストラリアのスキー場に滞在して滑るより、日本に一週間滞在した方が安い。早めに航空券を予約すれば安いし、宿泊代は日本の方がずっと安いし、リフト券も安い。安さもあり、どんどん海外から白馬に外国人が来るようになりました。
白馬バレーの山岳地形。パウダースノー。ローカル。これら4つが合わさって。時間と金をかけてでも来る価値があると言われるようになりました。
(海外プロモーション)
我々もそれに合わせるように、海外に積極的にプロモーションをしました。コロナ前だが、オーストラリアだけでなく、シンガポール、タイ、アメリカ、カナダ。アメリカやカナダの東海岸はすごく寒くてカッチカチの雪なので、パウダースノーに対する憧れがすごくあります。日本を選んでもらうようにプロモーションをしました。
日本から一番近いヨーロッパはフィンランドのヘルシンキで、飛行機で成田まで6時間半。当然ながらフィンランド人、スウェーデン人やノルウェー人はウインタースポーツが大好き。冬の間は日本に来てパウダースノーを楽しんでいます。北海道はヘルシンキと直行便を作るくらい重要な空港。
ヨーロッパで人気が高まっているので、スイス、デンマークやスペインの旅行会社に向けて、現地に行ってプレゼンテーションしています。これらの活動により、冬の集客に成功しました。
(外国人客の長期滞在)
海外のお客さんで白馬に来る方は平均5泊。白人系は7泊、アジア系は4泊以下。そのおかげで、宿の平日稼働は高まりました。長く滞在するため、ご飯は宿で食べずに外で食べます。
日本人の旅行だと、スキー場と宿の往復で旅が完結。そうすると、人が外に出ないから、街がどんどん衰退します。
街をプラスの方向に変えていけるようインバウンドに取り組んでいます。2005年に外国人向けのレストランガイドを作りました。最初は50ページだったが今は200ページ。ビジネスチャンスと捉え、日本人が白馬に来てレストランやバーをオープンするようになりました。
外国人が夏もいたら楽しかったということで、移住する人が増えています。村の人口は増えてはいませんが、緩やかな感じになっています。
(ブランドの必要性)
冬の集客自体は成功したが、2005年から今までの間にリーマンショック、SARS、東日本大震災があったりで、集客が上がったり下がったりしながら右肩上がりしています。
ウィスラーやシャモニーなど世界的に有名なスキーリゾートを見ると、そういった外的な要因があっても、すごく安定しています。業績が一年で悪くなったりすることはありません。
それは何の違いなのかというと、ブランドがあるから。景気が悪くなっても、ウィスラーはウィスラーであり続ける。物価が高くなっても、急に値段を上げたりはしない。すごく根がしっかり張っているスキーリゾートは消費者もよく分かっています。
白馬も、今はパウダースノーというスキーのターゲットの中で一番主流だから選ばれているだけであって、それだけではいけない。日本の北にあるスキー場はどこもパウダースノー。白馬に何で来なければいけないのか、をきちんと伝えなければいけない、と考えました。
(国際大会の誘致)
フリーライドツアーの国際大会誘致をしました。フリーライドツアーは、バックカントリーで行うスキーとスノーボードのコンテスト。雪崩が起きるような場所で、スタートとゴールだけが決まっています。そこの間を滑って飛んだりして総合力を競います。世界中で予選があり、新潟でも開催しているスキー場があります。その国際大会を最初に誘致しました。
どのようなものなのか動画が分かりやすい。YouTube映像を見てほしい。
https://youtu.be/WjiO9MsIJ6o<外部リンク> こういう大会を3年にわたり開催しました。
(世界への露出効果)
「Hakuba Valley」という言葉の露出効果を調べました。スイスやスペインなど世界のTVニュースで放映され、Netflixでも生中継され、Googleで「HAKUBA」と英語で入れると出てくるようになりました。
ライダーひとりひとりがすごい有名な人なので、InstagramやFacebookのエンゲージメントで合計1,000万以上。それを見て、白馬に行くしかない!白馬はやばいぞ!と言って、来てくれるようになりました。
ジャパンパウダー=ジャパウ(JAPOW)という造語が出来上がり、Instagramにハッシュタグで#JAPOWと調べると30万以上の投稿があります。それ以外にも1月はJanuaryなので、ジャパニュアリーという造語もできました。白馬も世界を代表するスノーリゾートになりつつあります。
(次にやらなければいけないこと→マウンテンリゾート)
我々、白馬の住民からすると、ウィンターリゾート、スノーリゾートやスキーリゾートと言われることに、ものすごい違和感があります。冬はすごい楽しい季節のうちの一つに過ぎません。我々は、春も夏も秋も白馬の中で自然を遊び尽くしているので、ウィンターリゾートと言われることに対して少し違うと感じています。
では、僕らは何をやりたいのか?と皆で考えた時に、日本にはまだない「マウンテンリゾート」と呼ばれるリゾートを白馬村で作ろう、と。これが合言葉として一番しっくりきました。
(グリーンシーズンのアピール)
まずは、きちんとグリーンシーズンをもっとアピールしていかなければいけない、ということになりました。それで、冬以外のショッピングする場所ができたりとか、テラスを作ったり、マウンテンバイクのコースを作ったり、スノーピークプロデュースのグランピングなど、こういったオールシーズンのコンテンツにものすごく力を入れてきました。
(スノーピーク ランドステーション白馬)
ひとつ転機になったのが、スノーピークのランドステーション白馬。キャンプメーカーなので、どちらかというと春夏秋。そういうブランドが、スノーリゾートといわれる白馬にフラッグシップストアを出すということは、白馬がグリーンシーズンも良い所だと認められた形だと思っています。
ランドステーション白馬には、白馬村観光局のインフォメーションが入っています。まず白馬に来たら、ここに来ればいろんな情報を得られます。ここをゲートウェイにして、いろんなところに散らばっているアクティビティのコンテンツに行きましょう!という形になっています。
(リゾートとは?)
グリーンシーズンのプロモーションになった時に、リゾートというものをもう少し皆で深掘りしていこうということになりました。白馬をリゾートとすると、リゾートではない所はどういうところなんだろう?リゾートに似て非なるものは観光景勝地。有名なお寺や建物の写真を撮って楽しむ所とは少し違います。
ハワイに旅行に行く人で、ダイヤモンドヘッドを見にハワイに行く人なんて一人もいないはず。ハワイに行く理由は、ハワイに住んでいる人たちの過ごし方を疑似体験する。自分たちの日常と異なる現地のライフスタイルを少し体験したい、ということが大きな理由。
白馬の人たちも、人がうらやむようなライフスタイルを、まず住んでる人が送るっていうことがすごく重要だと思いました。異なる日常が、どれだけ素晴らしいかということ。そこにお客さんを寄せ付ける秘訣があります。滞在目的となりうるライフスタイルを地元の人が送っているか。
年に一度の観光局の総会で、事業者の皆さんに言うのは「まず仕事ばっかりしないで遊んでください」と。自分たちが、白馬の観光や自然で遊ばないで、お客さんに何が紹介できるんですか、と。お客さんは旅に来て、疲れた顔をしている宿の主人を見たらゲンナリしますよ、という話をしています。
それで、どんどん遊ぶ人達は増えてきましました。皆がやってる遊びを収録した動画をグリーンシーズンのプロモーションビデオとして作りました。
白馬のグリーンシーズンは、海はないが、山・湖・川を資源にして、マウンテンバイク、山登り、川下りなど、夏のシーズンは本当に楽しませてもらっています。
(高校生によるグローバル気候マーチ)
最初にインバウンドプロモーションを初めてから、ブランディングをして、冬だけではないオールシーズンリゾートを目指してやってきました。
楽しいアクティビティを将来にわたってできるのか?というと、実は思い通りにはならないという結果が出ています。積雪量の減少、平均気温の上昇など。
この状況に、一番最初に声を上げたのが地元の高校生。地元の高校生3人が、私たちも白馬でグローバル気候マーチをやりたい!と声を上げました。それに賛同した大人や子供達が200人ぐらい集まり、白馬の駅から役場まで歩いて「気候変動なんとかして下さい!」「私たちが将来白馬で遊ぶことができないのは我慢できません!」「大人の皆さん何とかして下さい!」と訴えたんです。それを受けて2019年の12月に、白馬村で気候非常事態宣言を出しました。
自然の資源を有効活用しながら、お客さんに来てもらうということをずっとやってきましたが、そのベースとなる自然が当たり前の状態でなくなってしまうのだから、観光局も何かしなきゃならない、ということになりました。
(サスティナブルマウンテンリゾート白馬へ)
原料から生産して廃棄する。今、我々がやっているのは廃棄されたものからリサイクルするリサイクルエコノミー。サーキュラーエコノミーは、プロダクトの開発段階から廃棄物を出さない設計をしようということ。スタートアップの人たちと勉強しながら、白馬村の中でもできないかということをやっています。
カンファレンスでは、サーキュラーエコノミージャパンの方からお話を聞いたり、様々な企業の方からお話をしてもらっています。サーキュラーエコノミーを白馬村がやるという旗を上げることで、有識者、ベンチャー、大手企業がそこに参画して、産業が活性化する。世界が少しずつでも変わっていければと企業と取り組んでいます。
スキーリゾートからマウンテンリゾートへ、最終的にはサスティナブルマウンテンリゾート白馬に向かって取り組んでいます。これからまた新しいことがどんどん生まれてくると思いうので、ぜひ白馬へ遊びに来ていただければと思っています。
(ご清聴ありがとうございました。)
今回の「気になる企業とのコラボセミナー」は、地域の魅力を積極的に売り込む白馬村観光局をテーマに行いました。
参加者の中には白馬村のファンも数名いて、白馬の魅力の高さを改めて感じました。落ち着いて冷静に、順序立てて話す福島氏の言葉に、参加者は熱心に耳を傾けていました。小さな自治体でも、しっかりとした考えと目指すべき方向性を持った取組を進めることで、国内外問わず、個人や企業のファンが増えていくのだなと感じました。
意見交換では、スノーリゾートを有する市町村からの質問や、観光局と役場の観光課との役割分担についての質問などがありました。
今後も行政の皆さんの関心が高く、企業と行政がコラボレーションすると地域課題の解決に結びつくようなテーマや講師を選んでセミナーを開催していきたいと考えていますので、ご期待ください。
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