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山小屋への物資輸送の救世主?~妙高市「高谷池ヒュッテドローン燃料輸送」~1(新潟の未来図鑑withデジタル)
妙高市総務課スマートCity推進室スマートCity・広報グループ 係長 山川 高士さん
妙高市総務課スマートCity推進室スマートCity・広報グループ 主事 竹内 風吹さん
インタビュアー 新潟県 知事政策局 参与(デジタル改革担当) 佐藤 久信
中山間地域等の移動や日常生活に不便な地域における課題解決手段として、令和4年度からドローンの実証事業に取り組んでいる妙高市の「ドローンを活用した山小屋への物資輸送に関する実証事業」とドローンの今後の可能性についてお聞きしました。
20分の1の時間で!
佐藤 今年度実証事業として実施した高谷池ヒュッテへのドローンを活用した燃料輸送の概要について、聞かせてもらえますか?
竹内 今回の実証事業は、火打山山中の標高約2,100mにある高谷池ヒュッテまで、登山道入り口の笹ヶ峰駐車場からドローンによって燃料を運ぶという取組でした。妙高市では、令和3年度にドローンを用いた新たなビジネスモデルを構築することで、雇用の確保や市外企業の進出を誘導することを目的に「妙高市先進技術社会実装事業計画」を策定し、令和4年度からドローンを活用した実証事業を行っています。今回の事業の具体的な内容は、笹ヶ峰駐車場から高谷池ヒュッテまでドローンを使って往復約9、6km、総重量26kgの燃料を運んで戻ってくるという実証を行いました。高谷池ヒュッテでは自家用発電機を利用しており、春にヘリコプターをチャーターして必要物資をまとめて輸送し、シーズン途中で食料や日用品といった物資が足りなくなると人が担いで山を登って荷物を届けているのですが、往復約5時間かかるかなりの重労働です。ところが今回のドローンによる輸送実証では、約15分と所要時間が徒歩の20分の1ということで、非常に効果を感じています。ちなみに令和4年度に実証を始めた頃はドローンで運べる荷物は3kg程度だったのですが、今回の機体は30kgまで運べるということで、ドローン技術の進歩により活用の道が広がると思っています。
佐藤 所要時間が20分の1になったというのは凄いですね。今回の実証の成果と課題はどうですか?
竹内 今回は、笹ヶ峰駐車場側と高谷池ヒュッテ側にそれぞれ1名ずつ操縦者を配置し、中間点で操縦者を切り替える形でプロポを使って映像を見ながら手動操縦により行いました。実証の成果としては、ポリタンクに入れた燃料を無事にヒュッテに届けて戻ってくることができ、時間も人が山を登る場合と比べて大幅に短縮できることが証明されたことで、今後の実用に向けた道筋ができたことだと考えています。課題は、笹ヶ峰駐車場側において地上からドローンを目視できず、また、機体の目視確認のために高所作業車が必要なため、悪天候により飛行できないと作業車を手配しなおし、作業車の都合に合わせる形で日程調整を行う必要があることと、Lteが利用できないことから、高谷池ヒュッテ側にも操縦士が必要だということです。実は昨年11月に高谷池ヒュッテに携帯電話の基地局が設置されたので、来年度は、今回の課題への対応としてLteを利用し、笹ヶ峰駐車場側に緊急時対応のための操縦士1人をおいた形によるレベル3、5飛行の実証を予定しています。
佐藤 今回の実証ではプロポで映像を見ながら操縦をしたとのことですが、その映像だけでどこを飛んでいるとか、方向は分かるのですか?
竹内 この山の地形を知っている人が見れば分かるのですが、そうでないと分からないです。