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今年、県内のブナ林では、大量着果が観察されています(写真1)。ブナは、数年から十数年の間隔で「豊凶」を繰り返し、豊作年には林床に多くの種子が落下します。ブナの実はツキノワグマなど野生動物にとって重要な食料の一つであり、その豊凶は人と野生動物との関わりを考える上でも注目されています。
一方、ブナの豊作は、森林づくりにとっても重要な意味を持っています。ブナは雪深い新潟の自然環境に適応した代表的な樹木であり、将来の森林づくりに利用する苗木の種子を安定的に確保するためには、地域内での採種源の整備が重要です。

写真1 たくさんの実をつけたブナ(令和8年8月、長岡市の母樹林)
樹木にも「地域ごとの違い」があり、長い時間をかけて環境に適した性質を持つ集団が形成されています。そのため、森林づくりでは地域に適した種苗を利用することが大切です。異なる地域から持ち込んだ苗木では、環境への適応力低下や地域固有の性質の消失につながる可能性があることが知られています(※参考資料)。
新潟県では、ブナなど広葉樹種子の安定確保に向け、平成初期に国事業により整備・選定された母樹林に加え、平成17年のブナ大豊作を契機に採種に適した林分を追加指定し、種子生産量の調査を開始しました(写真2)。平成21年度以降は県内7か所のブナ母樹林で調査を毎年継続し、その結果は県内産ブナ苗の供給体制づくりにも活用されてきました。豊作年に確保された種子は、数年をかけて苗木として育成され、地域の森林づくりに役立てられています。
また、これまでの長期調査から、豊作になる間隔や豊凶の程度は林分によって異なることが分かってきました。

写真2 シードトラップで落下した種子を回収し、数量や重量を調査する。
ブナの豊凶は自然現象であり、短期間の調査だけではその特徴を捉えることはできません。長年にわたり母樹林を観測し蓄積してきたデータは、これからの森林管理や種苗生産を考える上で貴重な情報となります。豊凶調査は全国各地でも進められており、継続的な観測によって、地域による豊凶パターンの違いなど、新たな知見が得られています。今後も、こうした調査を継続しながら、雪国に適応したブナをはじめとする地域の森林づくりに貢献していきたいと考えています。
最後に、調査にご理解、ご協力いただいている関係者の皆様に、深くお礼申し上げます。
森林・林業技術課 塚原 雅美
※ 参考資料
・国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン<外部リンク>
過去の関連記事
「林業にいがた(森林研究所たより)」では、これまでブナ種子や採種源に関する情報を以下の記事で紹介しています。
・2005年8月号「ブナが豊作になりそうです―地元産の種子を活用しましょう―」
・2006年11月号「豊作年のブナ種子生産量とその予測―県内産ブナ苗木の安定供給にむけて―」
・2007(平成19)年06月/産地別ブナの成長差異/布川耕市
・2012年8月号「ブナ母樹林の種子生産量―平成23年の豊作について―」
・2016年9月号「ブナ母樹林の種子生産量調査について」
・2018年9月号「ブナの種子の特徴と育て方」
・2024年2月号「ブナ母樹林の豊凶及び種子生産量調査について」
● 母樹林の種子生産量調査結果は、新潟県森林研究所ホームページで公開しています。