ページ番号を入力
本文
江戸時代に取り入れた蝋型鋳金(ろうがたちゅうきん)の技法を守りながら、現代の暮らしに調和する工芸品を制作している担い手さんが柏崎市にいます。五代晴雲 原惣右衛門工房五代目の原聡さんと嘉子さんはご夫婦で大久保鋳物を制作しています。

原聡さん・嘉子さんご夫婦
「蝋型鋳金の職人は全国でも少数になり、今では大久保鋳物の制作に携わる工房は1軒のみとなりました。今回、県伝統工芸品に指定されたことをきっかけに、大久保鋳物の技や歴史・文化を、より多くの人に伝えていきたいですね」と、代表の聡さんは語ります。

工房
離れにある工房には、所狭しと土や様々な道具が並んでいます。

展示品
ギャラリーには、聡さんが手がけた花器や香炉、酒器などいろいろな作品が並び、蝋型鋳金ならではの精細な世界が広がります。
溶かした和紙と粘土の練り 松脂と蜜蝋を溶かし合わせ

蝋で自由に原型を作る 中子と鋳型の制作
制作は、まず蝋で原型をつくるところから始まります。原型のまわりを“真土(まね)”という土で丁寧に包み、数日かけて乾燥させます。

乾いたら炭火でゆっくりと焼いて蝋の原型を溶かして流し出して鋳型を作ります。その鋳型に溶かした銅を流し込み、冷めるのを待って、固まった後に鋳型を割って鋳物を取り出します。最後に磨きあげて完成します。

蠟型鋳金蜻蛉文鎮
この技法は奈良時代から続くものだといいます。使用する蝋や土は地元で採取したものなどいろいろありますが、作品や工程に合わせて、現在でも昔ながらの配合や製法で手作りしています。
「時間も手間もかかりますが、昔ながらのやり方でないと出せない味わいがあるんです」と聡さんは優しく語ります。
嘉子さんは、蜻蛉の細工をした文鎮を手に取りながら、「蠟型鋳造法では、こんなに繊細な作品も作れるんですよ」と誇らしげに話します。手に取って見ると、見た目以上にずっしりとしていて重厚感を感じます。
大久保鋳物には、蝋型鋳金ともう一つ特徴があります。「紫銅焼き(しどうやき)」、「斑紫銅(はんしどう)」と呼ばれる技法で、蝋型鋳金などで制作した銅器を良質の炭で焼いて、銅が変形しそうになる直前に取り出して、冷めてから磨き上げて、銅鋳物表面に赤紫色の模様を浮かび上がらせます。取り出す時の気温や金属の配合、焼き時間、焼き温度などによって模様は変わり、二つとして同じものが生まれないといいます。

銅器が変形する直前で取り出します 研磨すると独特の斑紋が現れます
「どんな模様になるかは、取り出すまでわからないんですよ。取り出す瞬間は今でも少し緊張します。でも、その分、現れた模様を見ると、こんな表情が出たか」と感動しますね。そう語る職人の表情には、伝統の技を守る覚悟が宿っています。作品を眺めていると、その神秘的な美しさに見とれて時が過ぎるのを忘れてしまいます。

酸化が進むことで色味が深まり、趣が増していきます
2017年、柏崎花火大会を訪れたシンガポールのデザイナーと、「HANABI Project」を立ち上げました。2020年には初めてのコラボ企画となる酒器「HANABI」を発売し、すぐに完売するほどの好評だったといいます。
現在も交流が続いているそうです。国内外の展示会にも積極的に参加し、作品を通じて柏崎の文化と技術を伝えています。

[HANABI]
NICO主催 アンビエンテ
シンガポール KYO project
昔ながらの技法を大切にしている原さんですが、近年は少し苦労していることもあるそうです。
「昔から変わらない材料をできる限り使いたいと思っていますが、土などが入手しづらくなっているんですよ。」と嘆きます。
それでも原さんは、「これまでやって来られたのは、地元の人々の支えがあったからです。本当にありがたいと思っています。」と地元への感謝の念を忘れません。
この春からは、息子さんの惣太郎さんが工房に戻って来られて、技の継承を始めています。併せて惣太郎さんはSNSを活用して、魅力を国内外へ発信していきたいと思っているそうです。
コロナ禍を経て、暮らしの中で“本物”や“丁寧さ”を求める声が増えてきました。手仕事の作品には、人の気持ちに寄り添ってくれるような温かさがあります。
原さん夫妻は、「作品を通して、伝統への敬意や文化への理解に繋がれば」と語り、これからも技の継承と発信に力を注いでいきます。
工房併設のショップ、またはECサイトhttps://souemonimono.thebase.in/<外部リンク>で購入できます。
五代晴雲 原惣右衛門工房
新潟県柏崎市大久保二丁目3番12号
TEL 0257-22-3630
HP https://souemon-imono.com/<外部リンク>
Instagram https://www.instagram.com/seiun5th/<外部リンク>
Facebook https://www.facebook.com/souemon.hara#<外部リンク>
取材日:2025年9月4日
