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南魚沼には「魚沼きのこ」と呼ばれる7種類のきのこがあります。白く長く育った「えのきたけ」は、これまで「鍋の添え物」として慎ましやかに食卓に並んでいました。
しかし、最近になって「えのきの石づきステーキ」が「まるでホタテの様な食感」と飲食店で人気を博し、まさかの主役に躍り出たニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。
普段は主役にならないけれど、欠かすことの出来ない秋の食材である「えのきたけ」。今回は、えのきを親子三代で育てる上村政樹さんを訪ねました。
「昔は出稼ぎ対策で育てていましたけど、気候が合ったのですかね。一時期は20軒近いえのき農家が南魚沼にありました。」
魚沼きのこの7種類の中で最も生育温度が低いのが「えのきたけ」の特徴。冷房のなかった時代には南魚沼の低い気温と日照時間の短さが、えのきの生育にとって良い環境となっていました。
「温度を下げることで成長を抑制しながら育てることが出来ます。そうすると瓶の中の栄養分をしっかりと吸い上げて、目数の多い、締まった肉質のえのきが育ちます。」
えのきの栽培方法は少し特殊で、菌を瓶が真っ白になるまで培養した後に「菌掻き」という作業をします。古い菌を取り除き、刺激を与えることで「発芽」を促すのです。
菌掻き後、発芽したえのき
「芽出し(発芽)」をし、均一な高さになる様に「ならし」をした後には「抑制」という行程に入っていきます。この段階で室内の温度帯を5~6度まで慣らしながら下げていくという細かい温度管理が必要ということです。
収量確保のため、じっくり育てる
「温度と湿度を細かく管理していくと、9日間で発芽します。温度が高かったり、光を当てないと1日で3~4cmはヒョロっと伸びてしまう。そうすると隙間の多い目数が少ないえのきになってしまう。促成すれば良いってものでもないですね。」
上にまっすぐ伸ばすため、フィルムを巻く
2~3cmまで成長したえのきには、手作業でくるりとフィルムが巻かれます。これは上にまっすぐ伸ばし商品価値を高めるためです。実はえのきたけも、こうした細かい管理がされているのですね。
上村さんが、父の経営するえのき農家へ就農をしたのは23歳の時。現在は34年目を迎え、息子さんと奥様と共に経営しています。
「試行錯誤しながら育てるのが好きで、どうやったら自分好みの傘が大きくて、軸が太くて、歯ごたえのある物が出来るか、いろいろ試してますよ。ただ、市場では細くて細かい物が好まれていますから、好き勝手には作れませんけどね。」
もともとは「おが」と「米糠」しか使われていませんでしたが、いろいろな品種を試したり、培地の配合を変えたり、栄養源を「おから」や「コーンコブ(とうもろこしの芯を砕いたもの)」にしたりと良い品質のえのきを出荷する努力をしてきたと言います。
「20軒近くあった農家も5軒まで減ってしまいました。だから、個性を出すことや栽培することに、少し張り合いはなくなってしまったかもしれません。でも、農家が少なくなってもきのこやえのきを地元の人は食べ続けてくれると思うんですよ。」
南魚沼市に一つの産業を根づかせた農家の一人として、これからもずっと、えのきを作り続けていくという覚悟が言葉の端々から伝わってきました。
「50年前には南魚沼に『えのき』という産業はなかったですけど、作り続けることで今、こうして産業になっています。えのきが南魚沼の地場産業の一つであるということが、もっと伝わってくれたらと願っています。」
瓶からスラッと伸びた細く白いえのき群の中に、ドシっとした印象のキノコがありました。えのきのように群生していますが、色は茶色く、傘はぷっくりとしていて、太い軸が特徴的。
天然に近い色、茶えのき
「これはブラウンえのき、茶えのきとも呼んでいます。実は野生えのきって、こういう色をしているんですよ。」
どうやら、このブラウンえのきは私達が馴染み深いえのきとは別品種。太さと味の濃さが白えのきとの大きな違いだそうです。
新しい名産品づくりにも取り組む
「5年ほど前、既に作っていた農家さんに教えてもらい栽培をスタートしました。豊洲の中華料理屋さんや飲食店に注文がある分だけ出しています。市場にも出したのですが、全然知られていなくて、失敗したえのきじゃないかと思われて全然売れませんでした。」
まだまだ地域では知られていない
新しい品種、栽培方法を積極的に取り入れていく上村さん。生育過程をコマ送りの動画にしてみたい、えのきのブーケを作ってみたいと、前向きに「えのきの魅力」を世の中に伝えようとする姿勢がありました。
「いつも目にするえのきでも、実際にどういう状況で育っているか見たことある人は少ないと思います。地元の小学3年生が毎年、職場体験に来ますけど、やっぱり珍しがってくれますね。」
実際に自分の目で見て、収穫したものを両親や祖父母へ渡す。それを美味しいと食べてくれることで、子供たちにきのこを好きになってもらいたい。
そんな願いを語る上村さん。魚沼きのこの名産地、南魚沼市で暮らす人たちにも、きのこの魅力を伝えてもらいたいと話します。
「これからも作り続ける」と語る
「えのきは食べて欲しいですが、それよりも『きのこ』を毎日少しずつでも食べて欲しい。身体に良いんですよ、やっぱり。毎日食べるものとして手軽で安いし、量もある。主役になるのはやっぱり難しいけど、南魚沼市の食卓に欠かせない食材にきのこがなってくれたらと思います。」
きのこ類は低カロリーながら、多様な栄養素が含まれています。上村さんから溢れ出る「きのこへの愛」。この記事を読んだ方、そして地域の多くの方へ伝わっていくでしょう。
身近にある食材、「えのきたけ」の魅力、改めて見つけてみませんか?
取材日:2020年3月18日
※えのきたけの効用※
えのきは免疫力を高め、抗ガン作用もあるといわれるβグルカンや、腸の働きを活性化させ、便秘に効果がある食物繊維を多く含みます。疲労回復やストレス緩和、肌荒れを解消するビタミンB1、B2、ナイアシンが豊富です。- JAみなみ魚沼ホームページより
えのきたけ
通年 |
パスタの代わりにえのきたけ!簡単でヘルシー。 |
ピリ辛が食欲をそそります。 |
きのこのレシピ(魚沼きのこ・山菜振興協議会)<外部リンク> |
四季味わい館(道の駅南魚沼「雪明かり」) 住所:新潟県南魚沼市下一日市855 「四季味わい館」ホームページ<外部リンク> |
六日町駅前ショッピングセンターララ内生産者コーナー 住所:新潟県南魚沼市六日町 |
※白色の品種のえのきたけは、市内直売所やスーパーで販売しています。
魚沼キノコ のロゴを目印にお買い求めください。
関連サイト : 「魚沼きのこ」公式HP<外部リンク>